変わりつつある介護職の労働環境

肉体労働かつ低賃金の労働環境が問題視されている介護業界は、深刻な人材不足に悩まされてる。人材不足の悪化により閉鎖寸前まで追い込まれている施設もあり、業界内部での危機感も強くなっているようだ。そこで、多くの介護施設が様々な独自の働き方の見直しを始めている。

東京都のある施設では、それまで日勤の延長として夜勤があるローテーションシステムを廃止し、職員の働きたい時間を調査し、夜勤のみを専門に行うシフト制度を設けたそうだ。職員に労働希望時間を聞く取り組みを始めた施設は多く、公益財団法人介護労働安定センターが行った「介護労働実態調査」では、職員の離職を防止するために、調査対象施設の約65.5%が「職員に労働時間の希望を聞いている」と答えたそうだ。現に前述の施設では、年間の離職率は改善前は25%だったが、改善後は9.8%にまで下がったらしく、その効果は大きいことがうかがえる。

また、滋賀県のある施設では、人材確保対策室を置いたり、採用ホームページ等の広報活動を充実させたり、さらには障がい者の方も積極的に採用するなど、独自の人材確保の取り組みを行っている。それに加えて人材育成に努めた結果、入職待機者が多数存在するようになり、2017年にはイクメン推進シンポジウムで表彰されるまでになったそうだ。このように、介護業界の深刻な人材不足を解決するために、多くの施設が試行錯誤し、それぞれでユニークな取り組みを行っている。全ての施設で実施されているわけではないが、このような取り組みが広がれば、介護職の労働環境のボトムアップも期待できるだろう。